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● 秋田大学医学部医学科
医学部の臨床基礎科目(免疫学・生理学・解剖学)からの出題。問題は基本的だが、医学部の専門課程で学ぶ知識が問われるので、かんたんな医学の専門書で対策する必要がある。
与えられた資料で説明された概念を用いて、意見を述べさせる。問題は2題出題される。一方は、与えられた概念を用いて分析させる問題(500字)。
もうひとつは、与えられた資料の内容をふまえた上で、受験生の医療従事者としての問題解決能力を問う問題(1000字)。
以下の3点が問われる問題である。
・与えられた概念を正しく理解し応用できるか?
・自分の意見を的確に表現することができるか?
・医療従事者に必要な倫理観と判断力を備えているか?
● 旭川医科大学
A4の問題用紙に3〜4枚分の長めの英文を1本読んだあとに、2〜3題の大問題に解答させる。英文は長いが、90分の試験時間で出題される英文は1本だけなので、時間が足りなくなることはまずない。英文の内容は「医師と患者の関係」や「感染症の歴史」など医学についてのものが多いが、「自然選択のはたらき」など自然科学一般についてのものも出題される。英文は専門的な単語を多く含むが、くわしい語注がつくので、一般的な医学用語を覚えていれば読める。
分子生物学、解剖学、生理学、免疫学、遺伝学など基礎医学の分野から出題される。とくに、分子生物学からの出題が多いが、解剖学、生理学、免疫学からもかなり専門的な知識が問われる。最近は分子生物学、免疫学からの出題が多いが、生理学についても対策しておくこと。総じて問題のレベルはかなり高い。
分子生物学については、ほとんど全ての分野から出題される。選択問題も論述問題も出題される。計算問題も出題されるので、ネルンストの式やミカエリス・メンテン式などはよく勉強しておこう。さらに、平成15年には糖代謝の反応を穴埋めさせる問題も出題されている。したがって、分子名も正確に覚えておく必要がある。
生理学、解剖学については高校生物ではほとんど太刀打ちならない。医学部、または看護学部などのコメディカルで学ぶレベルの知識である。問題は医学部のCBT(全国の医学部で課される共通の進級試験)に近い。選択問題が多いのもCBTと共通している。
免疫学は論述問題が多い。「T-cell
receptor の遺伝子再構成」などかなり専門的な知識も問われる。免疫学についても高校生物だけではほとんど解答は難しい。専門的な教科書で学ぶ必要がある。
<対策>
語注が充実しているが、医学についての英文を読みなれている必要がある。過去問題で演習することは必須であるが、東京コアの「NISHIMURA式医系英語の速読記述特訓」などで医系英語になれておくとよいだろう。ただし、この問題集に含まれている長文は比較的短いので、長い英長文で集中力を維持する練習には不向きである。したがって、必ず1度は過去問題を解くこと。
出題される範囲はきわめて広く、問題自体も非常に専門性が高いものが多いので、よほど時間をもてあましていない限りは、完璧に対策するのは不可能だと心得よう。ただし、かなり基礎的な問題も出題されるので、かんたんな問題は確実に得点できるようにしよう。
分子生物学については、基本的な知識をしっかり勉強すること。「エッセンシャル細胞生物学」や「生命科学」などを繰り返し読んでよくまとめておこう。かなり基本的な問題も出題されるので、取りこぼさないように。免疫学については、専門書で読んでも手間の割に出題数がそれほど多くないので、まず中京出版の「理系なら知っておきたい生物の基本ノート」で勉強した後、時間があればより専門的な免疫学の参考書で勉強するのが良い。「理系なら知っておきたい生物の基本ノート」は、代謝や複製・転写翻訳なども分かりやすく書いているので、旭川医科大学の対策のためには読んでおくと良い。
生理学・解剖学については、ほとんど医学部のCBTのような問題であるから、高校生物を勉強することは基礎にはなるが、実戦ではあまり役にたたない。しかし、高校生物を未修のひとは、まず高校生物のうち、人体に関係する部分を読んでしまうこと。実際の勉強法であるが、範囲が広すぎるのでまずは過去問題を解くのが最も時間効率が良い勉強法である。知り合いに医学生や理学療法士などがいれば教えてもらうのがてっとり早い。参考書としては「はじめの一歩のイラスト生理学」と「コア・スタディ人体の構造と機能」を挙げておくが、通読は時間の無駄なので止めるように。生理学は分子生物学に比べれば努力が報われない科目であることは肝に銘じておこう。努力しても得点につながりにくいものに時間をかけるよりは、確実に得点できるところで失点しないように努力するという判断は必要である。
● 大阪大学医学部医学科
4題の大問が出題される。4題のうち少なくとも3題は比較的短い英文を読ませて設問に解答させる問題である。また、4題のうち1題は英作文の問題であることが多い。
英文のテーマは医学や科学研究についてのものも多いが、内容を理解するのに専門的な知識が必要になる事はない。純粋に英文を読む能力を試すための試験である。
設問は本文の内容を説明させる問題や和訳問題、さらに空所補充の問題も出題される。また、まれに発音を問う問題も出題される。
英作文の出題の仕方は年によって変わるが、多いのは日本語の文章を英訳させる問題である。また、ユニークな問題としては、「オタマジャクシ」や「三角形」などの単語を英語で説明させる問題も出題されている。
医学論文を読ませて設問に解答させる。設問は4題程度で、内2題程度は和訳問題、2題程度は本文の内容を説明させる問題である。論文の内容は臨床医学のものが多く、特別な知識をもっていなくても読めるものがほとんどである。医療の現場で起こった問題についてのレポートが多い。
4題の大問が出題される。範囲は大学教養レベルの解析学と線形代数学である。解析学については極限や偏微分、重積分などが出題される。問題は多様だが、マクローリン展開を利用して近似値を求める問題はよく出題される。線形代数については行列式や固有値の計算、対角化、2次曲線の標準化などが出題される。
3題の大問が出題される。範囲は力学と電磁気、熱学である。いずれも大学教養レベルの問題であるが、高校物理で対応できる問題も出題される。力学からは剛体の回転運動や単振動、抵抗力が生じる場合の運動などが出題される。
電磁気からは電磁誘導や静電場中の荷電粒子の運動、電気回路などが出題される。まれにマクスウェルの方程式を用いる問題も出題される。
熱学からは古典熱力学と分子運動論が出題される。
4題の大問が出題される。範囲は量子化学と無機化学、熱化学、有機化学、生化学である。いずれも大学教養レベルである。
量子化学は波動方程式を解いて、電子のエネルギー準位を求める問題が出題される。また、等核2分子の分子軌道のエネルギー準位と構成原理についての出題も多い。分子の磁性についても説明できるようにしておくこと。
無機化学は分子構造と物性についての出題と金属錯体についての出題が多い。分子構造と物性については記述問題が多く、金属錯体の問題では、錯体の構造式と中心原子のエネルギー準位について問われる場合が多い。
熱化学は自由エネルギーと平衡定数の計算が多い。ひと通りの問題は出題されるので、しっかり演習しておくこと。計算と計算結果について説明させる記述問題が多い。
有機化学は記述式の問題と有機反応の問題が出題される。記述式の問題としては六員環分子の立体配座や官能基の配向性などが出題される。有機反応の問題では生成物の構造式が問われる。
生化学では、アスコルビン酸など生体内で重要なはたらきをする分子の構造式を問う問題が出題される。
4題の大問が出題される。範囲は分子生物学と生理学、免疫学である。20年度には集団遺伝学の問題も出題された。
出題形式としては空所補充も多く出題されるが、記述式の問題が多い。分子生物学からはDNAの複製や遺伝子発現機構、タンパク質の分泌やユビキチン−プロテアソーム系など一連の過程を説明させる問題が多い。また、染色体やオペロンの構造、細胞接着などについても出題されることが多い。疾患と関係するところでは、DNA修復機構と癌の発生や染色体の異数体(ダウン症など)についても問われることが多い。
生理学からは糖や脂質の代謝、感覚器、腎臓における排泄、循環器などが問われる。いずれも記述式の問題が多い。また、インスリンの分泌やバソプレシンの作用機序などいわゆる分子生理学の問題も出題される。
免疫学からは免疫担当細胞の働きからサイトカインのシグナル伝達機構、アレルギーや臓器移植にともなう拒絶反応にいたるまできわめて広い範囲から出題される。また、専門性が高い問題が多く概して難易度は高い。
<対策>
英文自体は国立大学の一般入試レベルなので、英語が得意ならば特別な対策はほとんど要らない。コンスタントに英文を読んで英語になれておくこと。また、過去問題を実際に解いてみて時間配分の研究をすることは怠らないように。設問の中では、英作文が最も難しい。英作文に自信がない人は対策しておいた方が良い。
論文読解の試験だけは1時間の試験なので、ある程度時間を意識して解答すること。記述式の問題が多いので、先に設問を読んでから解答に必要な情報を拾うことを意識して読むと良い。特に本文中に登場する人物の意見を整理する問題などでは、解答しながら読みすすめた方が早い。英文は一般的な知識があれば読めるような内容が多いので、医学部向けの英語長文問題集などで読解練習するのが良いだろう。ここでは、東京コアの「NISHIMURA 式医系英語の速読記述特訓」を挙げておく。
数学はとにかく演習にかぎる。最低限の知識はテキストで勉強するべきだが、実際に問題を解かなければ数学は身につかない。
サイエンス社の演習書などで大学教養レベルの数学をしっかり演習しよう。
東京医科歯科大学など数学の問題としては、解析学のみを出題する大学が多いので、線形代数学はあとまわしにされがちだが、
大阪大学の数学の問題では線形代数の問題の方がやさしい問題が多い。筑波大学などでも線形代数は出題されるので、しっかり演習しよう。固有値計算や行列の対角化、2次曲線の標準化などは完全にパターンなので解答方法を練習すれば、数学が苦手な人でもできるようになる。
解析学については、出題範囲は広いが出題されやすい問題はある。たとえば、マクローリン展開を利用して近似値を求める問題は頻繁に出題される。この場合、誤差項まで求めて近似値の評価ができるようにしておこう。また、変数変換をして重積分を計算する問題も多く出題される。ヤコビ行列などは使いこなせるようにしよう。
全体的に問題の難易度が高い大阪大学の試験でもっとも得点しやすい科目が物理である。高校物理をしっかり身につけた上で、大学教養レベルの演習書でしっかり演習して対策しよう。
力学については、大学の演習書でしっかり演習を積むとよい。サイエンス社の「基礎物理学演習」などがレベルとしては適当だろう。剛体の回転運動など高校物理では未修の内容が出題されるが、知識さえあれば高校物理の要領で解答できる問題が多い。
熱力学については、熱力学第1法則を正しく適用できれば解答できる問題が多い。断熱圧縮やカルノーサイクル、マイヤーの関係なども押さえておこう。
電磁気学は静磁場中の荷電粒子の運動など高校物理で十分に解答できる問題が多く出題される。ただし、電気回路の過渡現象なども多く出題されるので、大学の教養レベルの演習書で演習しておくこと。マクスウェルの方程式を用いる問題もまれに出題されるが微分方程式を解くことはなくやさしい問題である場合が多い。
他の科目と比べて化学は勉強するべき内容が多い。自分の経歴と試験までの持ち時間を考慮して、あらかじめ対策する範囲を決めてしまった方が賢明である。
確実に出題され、対策によって得点がのぞめるのは有機化学と熱化学である。まずはこの2科目をしっかり対策して、余裕があれば量子化学と無機化学を勉強するのがよい。
有機化学については、例外的な反応が多いので参考書で細かく勉強してノートにまとめるよりも、大筋を理解したらすぐに演習してしまう方が効率的である。演習書としてはサイエンス社の「演習有機化学」などがレベルとしては適当だろう。
量子化学と無機化学については、市販の問題集ではレベルが高すぎることが多いので、参考書をよく読んで知識の整理に努めた方がいい。いずれの科目についても、学士編入学試験で必要となる知識は限られているので、参考書を1冊通して読むよりも過去問題で出題された範囲の周辺について、いくつかの参考書でつまみ読みするのが良いだろう。
生化学の問題も出題されることがあるので、生命科学の勉強をする際には、生体内で重要なはたらきをする分子については構造式が書けるようにしておこう。
対策するべき範囲は分子生物学と生理学、免疫学である。毎年それぞれの分野から1題ずつ出題されるので、全ての科目を対策するように。分子生物学については、南江堂から出版されている「エッセンシャル細胞生物学」などの標準的な細胞生物学の教科書で勉強する。足りない知識は「the Cell」などでおぎなう。生命科学系出身であれば、最初から「the Cell」で勉強するのも良いだろう。「分子生物学講義中継」も分かりやすくて情報量が多いのでおすすめできる。
細胞生物学、生化学については受験対策としてはあまりいい問題集が市販されていないのが現状である。知識の定着度を測るには過去問題にあたるのが最良である。
生化学の問題も多く出題されるが、構造式を問う問題は化学の試験において出題され、生命科学の問題としてはもっぱら生化学が関係するトピックである。
生理学については、まずは高校生物で勉強するのが良い。高校生物で解答できる問題も多い。さらに過去問題で出題された周辺の知識をおぎなえばかなりの問題が対応できる。糖代謝や感覚器、腎臓における排泄などしばしば出題される範囲を集中して対策するのが効率的である。余力があれば、医学部の臨床基礎課程で使われる教科書なども参考にすると良い。ただし、受験をクリアすることに限ってはほとんど不要な情報なので、必要な部分だけ選んで読むようにする。分子生理学については高校の教科書ではほとんど触れられないので、インスリンの分泌やシグナル伝達経路、バソプレシンの作用機序などは拾い読みしておくと役に立つ。
免疫学については一番対策しにくい。問題がかなり高度である上、出題される範囲もとにかく広い。そして、市販の教科書では適当なレベルのものが少ないということもある。まずは、免疫学の基本をしっかり勉強した上で、過去問題に出題された周辺の知識をおぎなうのが良い。免疫学の基本を勉強するには、「休み時間の免疫学」や「」などが適当だろう。完答は難しくとも常識的な問題は落とさないように。
● 岡山大学医学部医学科
7〜8題が出題される。出題形式としてはほとんどが記述問題。
字数制限は400字以内のものもあるが、多くは100〜200字以内である。簡潔な解答を書けるようにしておく必要がある。
出題範囲は分子生物学と生理学が中心だが、遺伝学の問題も出題される。分子生物学の問題は、比較的自由に論述させる問題が多い。問題はすなおな問題が多く、基本的な知識がしっかり定着していれば、解答に窮することはない。
分子生物学からは代謝と転写・翻訳が頻出である。また、臨床的な視点から出題される問題が多いのが特徴。例をあげれば、一塩基の変異が重大な疾患を引き起こすしくみを説明させる問題などが出題される。遺伝病の
代謝については、糖代謝を中心として、代謝の各段階を概説させる問題が出題される。糖代謝については、解糖(発酵)とクエン酸回路および酸化的リン酸化のしくみをかんたんに説明できるようにしておこう。
生理学からは、キーワードを与えて論述させる問題と、比較的自由にしくみを説明させる問題とが出題される。前者としては、たとえば、「赤血球について説明しなさい」という問題に対し、キーワードとして、「大きさ」、「核の数」、「成人のときの数」、「作られる臓器」、「寿命」などが与えられる。一方、後者としては、具体例を挙げながらホメオスタシスを解説させる問題などが出題される。
● 香川大学医学部医学科
医学に関係する自然科学(物理学・化学・生物学)の問題が出題される。分量は多くないので、ふつうに解答していれば時間が足りなくなることはまずない。問題は基礎的な知識があれば解答できる内容である。まず高校の教科書と標準的な問題集で勉強すると良い。
物理の問題としては、外耳道における音波共鳴や血球沈降速度などが出題される。いずれも高校物理レベルの知識があれば解答できる。高校物理の問題集でしっかり演習しよう。
化学の問題は、生化学と有機化学、分析化学から出題される。有機化学は大学教養課程レベルの知識が必要。生化学と有機化学については名称を答えさせたり、かんたんに説明させたりする問題が多い。アミノ酸など生化学の重要な分子については構造式を書かせる問題も出題される。高校化学の知識だけでは足りない。高校化学で足りない分については、大学教養課程レベルの参考書で学ぶ必要がある。ただし、問われるのは基本的な知識なので、入門的な教科書で良い。有機化学については、「ビギナーズ有機化学」などを通読しておけば良い。生化学については入門書で勉強すると良い。アミノ酸や塩基など重要な分子については構造式が書けるようにしておくこと。
生物学の問題は、ほとんど解剖学と生理学とから出題される。高校生物の内容で解答できる内容がほとんどだが、医学部の臨床基礎課程で学ぶ程度の知識が必要となる問題も出題される。高校の図説などを参照して、重要な器官(感覚器、心臓、腎臓、脳など)の各部の名称は答えられるようにしておくこと。また、血球の大きさや密度、血漿中のイオン組成などの数値なども覚えておくと良い。
● 鹿児島大学医学部医学科
総じて、分子生物学と生理学についての深い理解が問われる試験である。旭川医科大学などに出題が似る。分子生物学と生理学から出題される。90分の試験だが問題量はかなり多く,多様な問題が出題される。分子生物学からは、資料や図表を読み取らせた上で考察させる問題が出題される。生理学については、正常な生理だけでなく、機能の障害が引き起こす病態までが問われる。
病態といっても,腎不全や心不全で浮腫が起こるというくらいのことが分かればよいので,多くの問題は高校生物でも十分に解答できる。ただし,いくつかの問題については高校生物の範囲を逸脱している。たとえば,視覚伝導路の障害による視野の障害について解答させる問題なども出題される。適宜,生理学のテキストを参照して,幅広い知識を得るようにしよう。
問題形式は多様で、穴埋め問題や計算問題、記述問題も出題される。計算問題ではネルンストの式など分子生物学で用いられる式の導出などが出題される。知っていれば、計算そのものは高校レベルで十分解答できる。記述問題は100字または200字の字数制限で解答させるものが多い。短い文で解答することが求められているので、要点を簡潔にまとめる練習をしておこう。記述問題で問われる内容は、実験結果の解釈や仮説検証に必要な実験のデザインなどである。この手の問題に解答するには知識だけでなく、知識を動員して自ら考える習慣が必要である。日頃から問題意識をもって勉強するように。
90分で中程度の医学論文を2本程度読ませて、各論文の内容について答えさせる問題。英語の問題は別にあるので,学力試験Uでは主に医学論文を読解し、日本語で内容をまとめて解答する能力を試されると考えてよい。かなりの分量の英文を読む必要があるうえに、論文の内容を200字程度の日本語で記述させる問題がそれぞれ4題ずつ出題されるので、手際よくこなさないと時間が 足りない。普段から医学論文を読みなれていないと苦戦は必至である。
英文の長さはA4版で1枚半〜2枚半程度である。英文の内容はバイオテロやアルツハイマーなど医学的な内容が中心なので、読解には医学英語の単語を知っておく必要がある。出典はEconomistなど必ずしも医学雑誌ではないが,書かれている内容は医学である。特に臨床系の医学論文を読んでおくことをおすすめする。
設問は本文の内容を日本語で解答させるものが多い。具体的には本文中で書かれている実験を行う目的と結果の解釈をまとめさせたり,著者の考えとそれに対する受験者の考えを記述させたりする。かなり込み入ったことを解答させるので、要点を外さずに要領よく内容をまとめ,簡潔な文で解答するように心がけると良いだろう。
<対策>
出題範囲がとにかく広いので、まずは高校生物を一通り勉強すると良いだろう。問題の難易度自体はそれほど高くはないので、高校生物をしっかり勉強すればかなり得点できる。生理学については、やや想像力を必要とする問題が多いが、医学部の基礎課程程度の知識までは必要ない。
一方、分子生物学については、高校生物ではカバーしきれない。しかし、それほど専門的な内容ではないので、まずは高校生物の問題集でしっかり演習をすること。さらに、羊土社の「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」などで知識を補うと良いだろう。
医学雑誌からの論文が多く出題されることから,ある程度医学用語も憶えておく必要がある。まずは、東京コアの「NISHIMURA 式合格する!医歯薬への英語」または「NISHIMURA 式医系英語の速読記述特訓」で医学に関する英文に慣れると同時に、これらのテキストにまとめられている医学単語を憶えると良い。上記2つのテキストに載せられている医学単語を憶えておけば、まずは十分である。もちろん、これだけではカバーしきれない単語も学士編入学試験では出題されるが、そのような単語は医学生でもなければ知らないのが普通である。そのような単語に出会ったときは、前後の文脈から意味を推定すること。
上記2冊は医学英語に慣れるためには良いが、編者は医学の専門家ではないので、科学論文としての英文を読むことを期待している人には、少し記述があいまいに感じるところがある。そのような人はかなり力がついてきているので、医学の有力雑誌である「New England Journal of Medicine」や「lancet」などから比較的読みやすい論文を選んで読んでみると良いだろう。他に医学・生命科学系の論文検索エンジンである「Pubmed」も紹介しておく。検索するべき単語が分かっているならば、検索して苦手とする分野の論文を選んで読むことができる。「Pubmed」は医学部のホームページなどにもリンクがある。
● 金沢大学医学部医学科
試験時間が120分間もある。出題形式も問題自体も岡山大学に似る。問題数は年度によって異なるが、全て記述式である。出題範囲はほとんど分子生物学と免疫学である。岡山大学は生理学も好んで出題するので、出題範囲は若干ことなる。頻出なのは、遺伝子発現の機構(転写・翻訳など)とゲノム科学である。また、医学と関係の深い、がん(p53のはたらきなど)や免疫(AIDS、ワクチン、ILなど)についてもよく問われる。
問題は比較的自由な考察をさせる問題が多い。たとえば、「ヒトとチンパンジーで塩基配列は1%しか変わらないのに両者が大きくことなるのはなぜか?」などである。この手の問題は何とでも解答できるが、採点者を納得させられるだけの説得力のある解答でないと高得点は望めない。説得力のある解答を書くためには結局、具体的な事例を交えながら論述することになるので知識は必要である。1問あたりの配点が20〜30点と高いので、説得力のある解答を作成して高得点を狙おう。
英語も試験時間が120分もあるので、時間が足りなくなることはまずない。出題されるのは基礎医学の論文である。Scienceなどの権威ある国際誌の論文に掲載された論文が出題されるのは他の医学部と同じである。論文は中程度の長さのもので、読むだけならば1時間もかからないだろう。
ただし、図の読み取りなども必要になるので、科学論文を読む機会が少ない人は、日頃から短めの論文を読んで慣れておくと良いだろう。語注がつくので、生命科学の論文を読みなれている人であれば、単語で苦労することはまずない。
設問は4題程度で、論文の内容を説明させる。すなわち、@論文の著者らの目的、A得られた結果、B結果から考察できること、などを説明することが求められる。論文の内容を正しく理解した上で、簡潔な文章で説明できるかどうかが問われる試験である。
<対策>
ゲノム科学と分子生物学を中心に出題されるので、高校生物で対応するのは難しい。生体高分子(核酸・タンパク質)と遺伝子の発現機構(転写・翻訳)を高校生物で学んだら、「エッセンシャル細胞生物学」か「生命科学」などで、分子生物学を学ぶと良いだろう。
金沢大学で出題される問題の多くは、いわゆる「正解のない問題」である。正解のない問題とは、たとえば「ヒトとチンパンジーで塩基配列は1%しか変わらないのに両者が大きくことなるのはなぜか?」というような問題である。この問題に対して、「1%のことなる塩基配列中に、発生を制御する遺伝子が含まれていると考えられる。」と解答しても間違いとは言えないが、具体的な機構が提示されないので説得力に欠ける。つまり、問題で問われている内容が漠然としているので、これが正解という解答は用意できない。解答に説得力があるか否かが評価の対象になるのである。いわゆる「正解のない問題」としては、他に「〜の生物学的な機能は何か?」や「〜が淘汰されないのはなぜか?」等がある。これらの問いは、「状況証拠からどのように解釈できるか?」をたずねている問題である。このような問題に解答するには、知識を活用して考える能力が必要となるので、付け焼刃の知識で切り抜けるのは難しい。したがって、あまりいいかげんなテキストで学ぶのはお勧めできない。時間はかかっても定評のあるテキストで勉強しよう。
ゲノム科学については、医療との関連も押さえておく。例えば、遺伝子診断やテーラーメード医療、遺伝子治療などは説明できるようにすること。その際、ゲノム情報に基づく医療について説明する場合、アプローチは2つあることに注意する。つまり、ひとつはゲノム医療の倫理的な問題について議論するアプローチである。もうひとつは、ゲノム医療を実現させる技術的な側面について議論するアプローチである。小論文の問題で、ゲノム医療について議論する事が求められた場合には、前者のアプローチに重点が置かれることになるが、生命科学の問題としてゲノム医療について問われる場合には、技術的な側面に重点が置かれることに注意すること。ゲノム医療を成り立たせる技術として、PCR法やSNIPS解析などは理解しておくと良いだろう。遺伝子工学やゲノム医療については多くの解説書が出版されている。手に入れやすい新書として、ここでは講談社ブルーバックスの「遺伝子診断で何ができるか」を紹介しておく。
英語の試験は、基礎医学の論文を読解して、内容をまとめる能力を問う問題である。科学論文は慣れないと読みにくいので、論文を読んだことがない人は短めの論文を読んで練習するとよい。科学論文の英語は言いまわしが単純なので(英語圏の研究者が書く論文はその限りではない)、よくつかわれる単語を憶えてしまえば、英語そのものはすぐに読めるようになる。むしろ問題になるのは、論文の内容を正しく理解して整理する能力である。実際によく見受けられる障害は、@図表がうまく読み取れない、A実験によって得られた結果と結果にもとづく考察とが区別できない、B対立する仮説の区別がつかないので、著者らが行った実験の意図が分からない、である。
論文読解の問題では、単純な文法問題や和訳問題は少ない。論文の内容を正しく把握できるかどうかの方が問題になる。なぜなら、学士編入学試験で論文読解の試験が課されるのは、医学研究者(または医師)として論文から情報を収集することができるかを試すためだからである。したがって、論文読解の対策としては、Scienceやnatureなどから短めの医学論文を選んで、一通り読みながら、内容を日本語でまとめる練習をすることである。その際、@著者らの仮説、A対立仮説、B実験の意図、C実験から得られた結果、D結果からどのようなことが考えられたか、に注意してまとめると良い。
● 群馬大学医学部医学科
小論文というよりは、生命科学と医療倫理について問う総合問題と考えた方がいい。近年は高校レベルの物理・化学や数学の知識を問う問題も出題されている。出題形式は多様で、一般入試の筆記試験に近いものになる場合もあるし、新書の抜粋(「脳死・クローン・遺伝子治療」(PHP新書)など)を読んだ後で問題に答えさせる場合もある。さらに、医学部の講義を受けて、講義内容について答えさせる場合もある。
新書や雑誌の記事から出題する場合は、問題文は最新の医療とその倫理的問題を題材にしたものが多い。設問は本文の内容を問うものもあるが、生命科学の知識を問うものもある。また、医療の問題についての受験生の考えを記述させる問題も出題される。生命科学の知識を問う問題としては、たとえば「体細胞と生殖細胞」をそれぞれ説明させる問題や、病因遺伝子の遺伝様式を問う問題などが出題された。
一方、講義を受けさせる場合は、40分ほどの特別講義を受講した後に、講義内容に則した問題に答えさせる。問題としては、用語の説明や、講義内容をふまえた論述問題などが出題される。40分程と短い講義なので、あまり細かな解説は期待できない。したがって医学や生命科学の予備知識があると解答しやすいだろう。
長めの医学論文を読んだ後に、6〜8題の問題に答えさせる。図表の読み取りや本文中の概念を日本語で説明させる問題が出題される。また、和訳問題も出題された。
論文は「nature」だけでなく、「lancet」や「New England Journal of
Medicine」など医学専門誌からの転載が多い。取り上げる論文の内容は、社会医学から分子生物学までと幅広い。解答には生命科学の知識は必要ではないが、生命科学の知識があれば解答がかなり容易になる問題も多い。例えば、「エピジェネティクス」を解説した英文を読んで本文の内容を解説させる問題が出題されたが、これなどは分子生物学の知識があれば、かなり解答が容易になる問題である。
<対策>
群馬大学の筆記試験は他の大学に比べるとかなり敷居が低い。しかし、出題傾向がころころと変わるのでかなり対策しにくい。
実際、2007年には高校レベルの物理や化学、数学なども出題された。おそらく今後も物理や化学、数学は出題されるだろう。なぜなら、高校レベルの物理や化学の知識は医学を学ぶのに必要だからである。
最低でも、数学は指数・対数とベクトル、物理は電気回路、化学は、モルと浸透圧、酸・塩基は知っておきたい。モルや指数・対数は薬理学を学ぶのに必要であるし、ベクトルや電気回路は心電図を理解するのに必須である。さらに、浸透圧、酸塩基の知識は生理学を学ぶのに必須であるし、臨床でも知らないでは済まされない。どのみち勉強するなら、入学前に勉強しておく方が賢いのではないだろうか。
具体的な対策としては、まず高校生物と物理、化学は勉強しておく。どんな問題が出るのかが予想しにくいのであるから、なるべく基本をしっかりと身につけて、柔軟に対応できるようにしておくことが重要である。さらに、記述式の問題が多いことから、文章をまとめる訓練もしておくべきである。
また、余力があれば「Molecular
Biology of the Cell」などで最近の基礎医学のトピックについても勉強しておくと良い。思いつくところでは、RNAiやエピジェネティクス、テロメア、ユビキチン-プロテアソーム系、免疫、脳科学などについて調べておくと良いだろう。
小論文(2)は実質的には、医学論文の読解能力を試す試験である。したがって、出典が多い科学雑誌から読みやすいものを選んで読んでおくと良いだろう。問題文となる論文の出典となる科学雑誌で多いのは、「nature」、「lancet」、「New England Journal of
Medicine」である。
ただ、専門ではない分野の論文を適当に選んで読み込むのは、実際にはかなり骨が折れる作業である。まずは可能な限り過去問題を取り寄せて解いてみるのが良いだろう。他の大学の過去問題を取り寄せて解くのも良い。
最初から過去問題に手をつけることに抵抗があるなら、まずは東京コアの「 NISHIMURA 式医系英語の速読記述特訓」で医系英語に慣れておくのも良いだろう。
年によってはかなり専門的な分子生物学の知識を必要とする英文も出題されるので、「Molecular Biology of the Cell」で勉強しておくこともすすめる。ただし、「Molecular Biology of the Cell」は分量が多いので、出題が期待されるトピックを選んで読もう。
●
高知医科大学
全問マークシート形式。自然科学についての英文(論文や教科書の抜粋など)を読ませて、内容についての問題に答えさせる。150分の試験時間だが、中程度の長さの英文を5〜6本も読むので、手早く読みこなさなければならない。英文の内容は、分子生物学、基礎医学、物理学などきわめて広い範囲から取り上げられる。また、かなり高度な内容なので、各々の分野について相当の知識がないと読みこなすのは難しい。
全問マークシート形式。数学・物理学・化学・生物学から出題される。数学は大学教養課程レベルの解析学を中心に出題される。とくに関数の極限についての出題が多い。また、物理学も高校では学ばない内容が出題される。たとえば、黒体放射や剛体の回転運動、流体力学などが出題される。ただし、問題自体はやさしいので、知識があれば、解答はさほど難しくはない。化学はほとんど有機化学と生化学から出題される。いずれも標準的な問題なので、基本的な知識があれば解答できる。生物学はほとんど生理学と分子生物学から出題される。とくに筋収縮や内分泌など生理現象の分子メカニズムを問うことが多い。
●神戸大学医学部医学科
出題傾向は千葉大学の英語の問題に似る。つまり、問題文の内容や分量、出題の仕方などが似ている。
問題文は、分子生物学や細胞生物学についての論文からの抜粋が多い。英文はそれぞれA4で1〜2ページ程度なので、長くはないが、3題出題されるので読まなければならない英文は多い。
英文の出展は「nature」のレビューや科学雑誌や権威ある生命科学の教科書からの抜粋が多い。論文の内容は多岐に及ぶが基本的には基礎医学の内容である。つまり、神経科学(脳皮質の組織構築など)やシグナル伝達経路(がんなど)についての論文が多い。また、光学顕微鏡の使い方など、医学研究の実験方法について説明している英文なども出題されることがある。同様の問題は千葉大学や北海道大学でも出題される。分子生物学の英文については、具体的なタンパク質名や遺伝子名が多いので、分子生物学をしっかり学んできた人でないと内容を理解するのは難しい。しかし、英文そのものは平易なので、「Molecular Biology of the Cell」などで分子生物学の知識を一通り押さえれば、読解自体は難しくない。解答においても、生命科学の大学院レベルの知識が必要となる。
それぞれの問題文について5〜7問ほどの問題が出題される。
問題は和訳問題や空所補充問題も出題されるが、論文の内容を記述させる問題が多い。記述問題は字数が特に指定されない問題が多いが、字数制限がつく問題もある。字数制限は80字以内と短い場合もあるし、300字以内とかなり長い場合も多い。つまり、問題によって、簡潔に内容をまとめることを求められたり、しっかりとした論理構成で説明することを求められたりする。出題者の意図を汲んで求められることを解答できるだけの機転が必要になる。
<対策>
まず、神戸大学の生命科学の問題は、実験結果から考察させる問題が多いので、生命科学系の大学生または大学院生に有利である。また、神戸大学は千葉大学などと同様、在学中は医学研究を行うことを求められているので薬学または理学部の生命科学専攻の学生が合格者に多い。基本的には医学研究者養成のための学士編入学試験である。したがって、文系出身者や数物系の出身者にはやや受けにくい大学ではある。同様の傾向は千葉大学や北海道大学などにもある。
以下、生命科学系の大学生、大学院生について対策方法を述べる。まず、神戸大学の学士編入学試験は論文の読解がメインであるが、背景となる知識を問うことも多い。したがって、分子生物学の一通りの知識は学んでおく必要がある。しかし、過去に出題された問題を見る限りは、「Molecular Biology of the Cell」や羊土社の「分子生物学講義中継」までの知識は求められていない。「Essential細胞生物学」に書かれている程度の知識をしっかり押さえることが重要である。ただし、ただ「Essential細胞生物学」に書かかれていることを憶えるだけでは解答できない問題も多い。つまり、厳密な意味での解答がなく、妥当な考察ができるかを問う問題が多い。したがって、普段から実験結果から仮説を立てて考える習慣が必要である。このようなことがあるので、研究をかじった事がある大学生や大学院生が有利だと考えられる。
「Essential細胞生物学」の内容がだいたい分かっているならば、問題演習を繰りかえすことが最も良い対策になる。神戸大学では、重要な概念や知識については説明させる場合があるが、細かな知識を問うことはまずない。それゆえ、「Essential細胞生物学」の内容をノートにまとめるのはあまり良い勉強法とはいえない。問題演習には、まずは神戸大学医学部の学士編入学試験の過去問題をするべきであるが、手に入る問題は限られる。問題演習を積むためには、比較的問題が似る北海道大学や千葉大学、筑波大学の英語の問題を解くと良いだろう。また、医学研究科や薬学研究科、理学研究科生命科学専攻などの大学院の入試問題なども参考になる。大学院の過去問題は多くの場合、請求すれば入手できる。いくつかの学士編入学試験や大学院入試の過去問題を集めて解けば、相当の力がつくはずである。
●滋賀医科大学医学部医学科
マークシート形式の選択問題。60分の試験で80題強の問題が出題される。分子生物学と生理学、発生学の問題が中心だが、物理や化学の問題も出題される。また計算問題も出題されるので、簡単な計算はできるようにしておくこと。出題形式も問題のレベルも山口大学の生命科学の問題に似ているので、山口大学と併願すると対策しやすいだろう。
2001年度の総合問題については、再現問題がインターネット上で公開されているので(なくなる可能性はある)、検索してみよう。再現問題を見れば分かるが、生理学の出題範囲は高校生物の範囲から多少逸脱している。つまり、医学部の専門基礎で学ぶ知識も問われる。ただし、ほとんどの問題は高校生物と一般的な分子生物学のテキストに書いてある内容だけで解答できる。病理の問題も数題出題されるが、常識で解答できる(ヘリコバクター・ピロリ菌が原因の病気など)。
化学については、機転が利く人ならば高校化学の知識だけで少なくとも半分は解答できる。残りの問題は大学の教養課程で学ぶ程度の有機化学の知識が必要である。
物理については高校物理から外れた問題が多い。ただし、原子物理の問題と力学の一部は高校物理で十分解答できる。しかし、電気回路の過渡現象や弾性体の力学、レイノルズ数、ファンデルワールスの状態方程式などは理系学部の教養課程で学ぶ内容である。文系の人や理系でも物理が苦手だった人は対時間効果を考えて対策する範囲を決めるなどの判断が必要になるだろう。
<対策>
とにかく問題数が多いので、あまり考えている時間はない。また、出題範囲がとにかく広いので、対時間効果を考えて対策しないと結局得点が伸び悩むことになる。全て解答できることが理想ではあるが、解答できない問題があっても仕方がないと割り切ることも必要である。ただし、捨ててもかまわない問題と、絶対に捨ててはいけない問題があることはよく認識しておくこと。
具体的には、高校生物と分子生物学の範囲から出題される問題は絶対に捨ててはいけない。高校生物の問題は努力すれば、誰でも解答できるはずである。そこで失点を許していては、高得点は望めない。したがって、まずは高校生物をしっかり勉強すること。それから、なるべくやさしい分子生物学のテキスト(「はじめの一歩のイラスト生化学・分子生物学」など)などで学ぶ。評判が良いからという理由で、「エッセンシャル細胞生物学」を端から読んでいってノートにまとめるようなことはしないように。内容が充実しているということと、即戦力になるということは別の問題である。山口大学や滋賀医科大学は、問題自体はやさしいものの出題範囲がとにかく広いので、説明がくわしいテキストよりも簡潔なテキストの方が使える。
時間が余って仕方がないようであれば化学や物理を対策しても良いが、化学や物理に時間を費やすよりも生物や英語、小論文に時間を費やした方がずっと効率が良いこと言うことはよく認識すること。そもそも出題される問題数が少ないので、物理と化学に時間を費やしてもあまり得点にはならない。ただし、生物も英語もよくできるのであれば、物理や化学に時間を割くのはアドバンテージになりえる。過去問題を見た上で、自分のバックグラウンドを考慮して判断しよう。対策するのであれば、化学ならば有機化学、物理ならば原子物理(とくに核物理)を勉強するのが良い。
●千葉大学医学部医学科
1時間の試験時間で中程度の長さの英文を2本読ませて、問題に解答させる。千葉大学の英語の問題はとにかく,時間との勝負である。下書き用紙がたくさんついてくるが、よほど英文を読むのが早い人でなければ使っている時間はない。下書き用紙はつけない方が、環境にもやさしい学士編入学試験になるだろう。
文は「the Cell」や「Developmental Biology」、「Genomes」など権威ある生命科学の教科書からの抜粋が多い。他にも「Science」や「Scientific American」などの科学雑誌からも出題される。
英文の内容はたとえば、「クロマチンリモデリングで働くタンパク質」など、具体的なタンパク質や遺伝子のはたらきについて記述したものが多い。ただし、問題に取り上げられるタンパク質や遺伝子のはたらきは本文中に書かれているので、しっかりと本文を読みこなせれば、特別な知識は必要ない。ただし、生命科学の常識として最低でも「エッセンシャル細胞生物学」に書かれている内容は完璧に押さえておきたい。また、できれば「Molecular Biology of the Cell」(「細胞の分子生物学」)や「分子生物学講義中継」(羊土社)などで勉強して詳細な分子機構についても理解しておくと、問題がかなり解きやすくなる。
分子生物学以外にも、再生医療についての英文や、環境問題についての英文、設問は本文中で説明された遺伝子やタンパク質のはたらきを説明させる記述問題が多い。およそ150〜250字以内の記述問題が2本の英文それぞれに4,5問出題される。したがって、相当早く記述しなければ1時間以内に全ての問題に解答するのは不可能である。問題を見た時点で、答えるべきポイントとだいたいの構成がイメージできると良い。繰り返し述べるが、下書き用紙を使っている暇はない。普段から生命科学の英文に読みなれて、問題文を読むだけでもだいたいどんなことを答えれば良いのかが分かっていることが理想である。
自然科学の問題も基本的には英語の問題と同じである。中程度の英文を読ませた上で問題に解答させる。1つの英文につき、4題程度の記述問題に解答しなくてはならないことも同じである。
また、英語の問題でも出題されるが計算問題がしばしば出題される。英語の問題と異なるのは出題される英文の内容である。英語の問題では分子生物学を中心とする生命科学の問題が多いが、自然科学の問題では生理学からの出題が多い。たとえば、血液循環や体温調節、ヘモグロビンの酸素親和性などについての英文が出題される。
中程度の日本語の文章を2本程度読ませたあとで、設問に対して解答を記述させる。テーマは「科学論文の捏造問題」や「出生前診断の是非」など多様である。特徴的なのは、掲載されている2本の文章はそれぞれ異なる立場から書かれた文章であることである。したがって、受験生は問題を多角的に分析した上で自らの考えをまとめなくてはならない。やはり記述量が多いので手際よく論述しないと時間が足りない。他にも「Our Stolen Future」(邦題:「沈黙の春」)などの有名な一般書からも出題される。
● 筑波大学医学部医学科
英語と数学とをあわせて120分で解答する。分量はかなりあるので、時間配分を十分に考えて解答しないと時間が足りない。
英語は中程度の長さの英文が2本出題される。英文にはそれぞれ4問程度の設問がある。内容は医学や生化学のものが多いが、科学一般についてのものも出題される。問題形式は、
@ 英文の内容を説明させる問題
A 下線部和訳
B 英文全体を要約させる問題(日本語・英語あり)
が例年出題される。
数学は統計学、線形代数、解析学(微分積分)から出題される。統計学は、実際のデータを統計処理する能力が求められている。線形代数と解析学については大学の教養課程レベルだが、かなりしっかりした演習書で対応する必要がある。
3科目の中から2科目を選んで解答する。分量はそれほど多いわけではないので、時間が足りなくなることはまずない。
物理は大学教養課程レベルである。ただし、高校物理の範囲で学ばない内容については問題文で説明されることが多い。一般受験の後期課程で出題される程度の難度である。
化学はおもに有機化学と物理化学から出題される。いずれも大学教養課程レベルだが、マススペクトルの読み取りなどやや専門的な知識も問う。
生物は生化学からの出題が多い。その他に分子生物学や発生学の問題も出題される。いずれも単純な知識を問う問題は少なく、
実験データから考察する問題が多い。
<対策>
英語は医学や生物学に関するものが多いので、まずは東京コアの「 NISHIMURA 式合格する!医歯薬への英語」、「 NISHIMURA 式医系英語の速読記述特訓」「医学部攻略の英語」などで医学英語に慣れておくのが良いだろう。とくに「 NISHIMURA 式合格する!医歯薬への英語」は医学単語がよくまとまっているので単語帳としても利用できる。
しかし、とくに「NISHIMURA
式」は医学英語の参考書であって医学・生物学の教科書ではない。これらの参考書に医学や生物学の知識を求めるのは無理がある。そうとは言え、学士編入学試験で出題される分子生物学や基礎医学の英文は、ある程度の予備知識が必要である場合がほとんどである。したがって、しっかり対策しようと思えば、英語で分子生物学や基礎医学の教科書を読んでおくことが望ましい。
分子生物学や基礎医学に関する英文を読むのであれば、「Essential
Cell Biology」か「Molecular
Biology of the Cell」がすすめられる。これらは難しい表現がないので読みやすいし、分子生物学の教科書としても定評がある。また、邦訳版としてそれぞれ「エッセンシャル細胞生物学」と「細胞の分子生物学」が出版されているので、対訳しやすい。端から読み合わせていくのは現実的ではないが、いくつか読む場所を決めて対訳すれば確実に力がつくはずである。
数学については、全般的にそれほど高いものを要求しているわけではない。基本的な事項をしっかり押さえていれば確実に得点できる問題ばかりである。まず、解析学は大学教養レベルの出題(偏微分など)もなくはないが、かなりの部分は高校数学で対応できる。最近は、大学と高校の橋渡しを意図した高校生向けの受験参考書なども多く出版されているので、まずは高校数学(特に数学UとV)をしっかり勉強するのが良いだろう。その上で、過去問題を見ながら解答に必要とされるレベルの知識を補っていくのが効率的である。
線形代数も同様である。最近の高校数学では1次変換くらいまでが範囲なので、まずは高校数学で勉強した上で大学生向けの参考書で勉強するのが良いだろう。一方、大は小を兼ねるので、最初から大学レベルの参考書・演習書で勉強するというのもひとつの考え方である。しかし、時間と労力に見合う分の得点が期待できるかということも考えておくべきであろう。
統計学については、高校数学ではほとんど取り扱うことがないので、大学生向けの参考書を使う必要がある。統計学の参考書としては、講談社の「ゼロから学ぶ統計解析」がすすめられる。まずは、この参考書に書かれている内容を理解して、例題と練習問題を全て解けば、統計学については、ほとんど心配ないはずである。
物理は高校物理が基本となる。まずは高校物理をしっかりと勉強して、過去問題を見ながら必要な知識を補うことにする方が効率的である。実際の問題は、高校物理で学ばない内容が出題されるが、高校物理の知識でも解けるように丁寧な誘導がつく場合が多い。高校物理だけでは不安だという方には、東京図書の「大学1、2年生のためのすぐわかる物理」で勉強することをおすすめする。この演習書の著者は有名予備校の人気講師であり、多くの受験参考書も書いている。したがって、かなり取り組みやすい内容になっている。
化学については、残念ながら高校化学だけでは何とも太刀打ちできない。大学レベルの参考書が必要である。しかし、問題自体はかなり基本的である。まずは、「なっとくする物理化学」か「理系なら知っておきたい化学の基本ノート(物理化学編)」などを一通り読んでから過去問題を見て対策を練ると良いだろう。
有機化学については、マススペクトルの読み取りなどもあるので少し演習書で練習しておいた方がよいだろう。東京化学同人の「ビギナーズ有機化学」などを一通り読んだあとで、サイエンス社の「演習 有機化学[新訂版]」や「基礎 有機化学演習」で演習しよう。
生物学は分子生物学・生化学からの出題が多い。また、単純な知識を問う問題も少ないので、腰を据えて勉強する必要がある。「Essential 細胞生物学」で勉強するのが一番良いだろう。この教科書の各章末には問題がついている。考える問題が多いので、活用してみよう。他に実験結果から考察する問題を集めた問題集としては、駿台文庫の「生物考える実験問題50選」がある。さらに、大学教養レベルの問題集としては東京図書の「大学1・2年生のためのすぐわかる演習生物」がある。自分にあったものを活用しよう。
● 東海大学医学部医学科
昨年は全問マークシート形式。問題は正誤問題や語句の挿入問題などが出題される。
東海大学の英語の問題のレベルは総じて高いことを、まず頭に入れなければならない。後述するが、適性試験の問題は比較的易しいため、英語で差がつくと思ってよい。近年の構成としては、@A4程度の長文問題が大問2題、A英文で書かれた中高レベルの数学の問題が大問1題(4〜5問)、B同義語や反意語、あるいは接頭詞や接尾詞やスペルミス等の語彙力を問う問題が大問一題(10問程度)である。まず@の長文問題の英文の種類だが、世界的に有名な「NEW YORK TIMES(ニューヨークタイムズ)」や、「SAN
FRANCISCO EXAMINER(サンフランシスコ エクザマイナー)」などの米国現地で日常的に読まれている一般ジャーナル誌の中から出題されている。出題は一般ジャーナル誌からなのだが、「男性と女性でどちらの幸福度が高いか年齢別に比較した意識調査」や、「医療訴訟問題の現状と根本的原因」などの医療系の内容に関する記事が試験に出題されている。出題が米国現地のジャーナルなので、必然的に英文のレベルは、日本の学生がお目にかかってきた英文と違い非常に高いものとなっている。しかも、この傾向は試験全体に見られ、Bの語彙力問題も、ネイティブの人しか分からないような単語同士の微妙な意味の差異を問う問題が多い。また、Aの英文による数学の問題も、<rectangle(長方形)>
や、<perimeter(周囲の長さ)>などの数学における基本の単語が要求される。総じて、ネイティブの人に近い英語感覚や能力が求められている試験だといってよい。しかし、そのようなネイティブ向けの英文の中からでも、日本の学生でも分かると思われるような、簡単な単語などを出す工夫がなされているため、5割は普通に取れるものと思われる。そこで、6割〜7割が合格の起死回生を分けるラインになると予測される。一番の試験対策は、なるべく多くの年の過去問題に触れて、自ら対策となる頻出単語帳や類似問題集を作って解くのがもっとも近道であると思われる。とにかく過去問題がキーワードになる。
全問マークシート形式。基本的な理解力や一般常識を問う問題。比較的易しい問題だが、英語が難しい分確実に取っておきたいパート。出来れば8割〜9割は欲しい所。
具体的な内容は、数学(主に確率、順位、並び方、計算問題)や統計データの分析、医療に関する常識問題などで全般に論理的思考能力が問われる。また、医療に関する常識問題として、病気に関する医療現場での常識(例;O157の特徴やインフルエンザの特徴)や、医療制度に関する知識(例;後期高齢者医療制度の対象者の選択)や自殺の原因の順位やアスベストなどの環境問題などの時事問題も問われる。総じて文章で問われる問題が多いため、文章理解能力、論理的思考能力が重要になってくる。また、数学や統計の問題に関しては、レベルはさほど難しくないため、複数の過去問題に触れて形式に慣れるだけで対策は取れると思われる。常識問題に関していえば、新聞の医療欄などに普段からよく目を通しておくこと、また、ただ目を通すだけではなく、医療従事者の立場から読んでおくことが重要になってくると思われる。
● 東京医科歯科大学医学部医学科
とにかく短い時間で多くの問題を解答しなければならないので、手際よく解答する必要がある。その場で解き方を考えているようでは間に合わないと思った方が良い。出題される問題は基礎〜標準的な問題ばかりなので、問題を見た時点で解答の筋道は分かるようにしておくこと。
総じて問題自体はそれほど難しくはないが、近くに東京大学があることもあり、現役の東大生(または大学院生)の受験が多い。したがって、筆記試験のボーダーラインはかなり高い。筆記試験では、8割程度の得点は必要だろう。実際、合格者の大半は現役の東大生である。
出願にはTOEFLのスコアレコードが必要である。平成20年度からはTOEFLのスコアによる足きりが実施されるので募集要項で確認しておくこと.また、TOEFLは受験してからスコアが手許に届くまでに大体1ヶ月程度かかる.足きりが心配な人は早めにTOEFLを受験しておいた方が良いだろう.
数学の出題範囲は、微分積分学と統計学だが、どちらも大学の教養課程レベルなので、大学の演習書で対策する必要がある.毎年、似た問題が出題されるので、過去問題を参考にして、対策する範囲を決めると良いだろう.標準的な問題集ならば、どの演習書で勉強しても大差はないが、ここではサイエンス社の「基本演習微分積分」と共立出版の「明解演習微分積分」を挙げておく。
物理の出題範囲は、力学、電磁気、波動だが、高校物理だけで解答できるものは少ない。やはり大学の演習書で対策する必要がある.「単位が取れる力学ノート」や「単位が取れる電磁気学ノート」で十分であるが、大阪大学医学部の受験も考えているのであれば、サイエンス社の「基礎物理学演習T・U」で演習するのも良いだろう。
化学の出題は、ほとんどが物理化学からである。とくに酸・塩基の化学平衡や電気化学からの出題が多い。有機化学もまれに出題される。量子化学は出題範囲とされているが、今のところ出題されたことはない。いずれも大学の教養課程で学ぶ程度の物理化学、有機化学の知識が必要なので、高校化学だけでは解答できない。
生物の出題範囲は、分子生物学(細胞生物学と生化学)が中心である。代謝、細胞骨格と細胞接着、複製・転写・翻訳についての問題が頻出である。例年、選択問題が10問、語句説明が5問、記述問題または計算問題が1問出題される。計算問題として、メンデル遺伝の計算問題も出題された。
中程度の長さの科学論文を2本程度読ませて、それぞれ問題に答えさせる。1時間の試験なので、手際よくこなさなければ時間が足りない。記述問題も多く解答に時間がかかるので、まさに時間との勝負である。論文は「nature」や「Science」からの出典が多い。論文の内容は臨床医学や基礎医学、環境問題、さらに動物の生態など幅広いについてのものが多い。問題は図表を読み取って答えさせたり、実験の概要と結果を説明させたり、記述するものが多い。しかし、本文の内容についての正誤問題なども出題される。英文そのものは素直なものが多いが、年によってはかなり読みにくい英文も出題される。
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