公認心理師と臨床心理士

公認心理師になるには

公認心理士になるには、大学の心理学科を卒業後2~3年の実務経験を積む、あるいは公認心理師養成大学院を修了した後に資格試験を受験し、これに合格しなければなりません。

公認心理師試験の受験資格は以下の通りです。
① 大学において主務大臣指定の心理学等に関する科目を修め、かつ、大学院において主務大臣指定の心理学等の科目を修めてその課程を修了した者等
② 大学で主務大臣指定の心理学等に関する科目を修め、卒業後一定期間の実務経験を積んだ者等
③ 主務大臣が①及び②に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めた者

主務大臣とは文部科学大臣と厚生労働大臣を指します。
何れにしても、公認心理師試験を受けるためには心理学系の大学を卒業していなければなりません。
したがって大学で心理学を専攻していなかった方は、大学(心理学科)に編入して大学の3年からやり直す必要があります。「あくまでも公認心理師を目指す」という場合はこのプロセスを経ることになりますが、国家資格といえども、これからできる未知数の多い資格に賭けるよりも、出身大学の専攻を問わずに指定大学院を受験できる臨床心理士を目指す方が現時点では得策かと思われます。

A:公認心理師法案第七条三号「文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者」の「同等以上の知識及び技能を有する者」と認定されれば、大学で心理学を専攻していなくても、公認心理師試験の受験資格が与えられます。

*臨床心理士になってから数年実務経験を積むことで「同等以上の知識及び技能を有する者」と認定される可能性があります。

既に心理学科を卒業している方(あるいは卒業見込みの方)で公認心理師を目指す方は、(2018年秋に実施予定の)公認心理師養成大学院入試に臨むことになります。

公認心理師養成大学院入試について

「公認心理師のカリキュラム等検討会の報告書から予測できることですが、臨床心理士指定大学院入試に比して基礎心理学や精神医学の出題の割合が増大すると思われます。
日本編入学院の臨床心理士指定大学院受験コースのカリキュラムには既にこれらの内容が含まれています。また、公認心理師を目指す方にはさらに公認心理師養成大学院受験に特化した個別指導等のカリキュラムを用意していますので、受験対策は万全です。

[公認心理師法案]
第七条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。以下同じ。)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者
二 学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの
三 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者

*「公認心理師となるために必要な科目」は以下を参照してください。
公認心理師のカリキュラム等検討会報告書の概要について
*公認心理師法は平成27年9月9日により成立、同年9月16日に公布。
本検討会は平成28年9月から開催し、平成29年5月31日に報告書をとりまとめた。

「臨床心理士について」

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公認心理師資格の創設によって
「心理士の資格は無くなってしまうのではないか?」
「国家資格である公認心理師より下位の資格となって、相対的に
臨床心理士の資格の価値が落ちてしまうのではないか?」
「公認心理師に仕事を奪われてしまうのではないか?」
等々の疑問と不安を抱いている方も少なからずいらっしゃると思います。

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公認心理師は国家資格といえども後発の資格であり、今まで多年に渡って地盤を築いてきた臨床心理士達の協力なしにはスムーズに発進できません。
養成システムに関しても、教授陣や設備面で考えて、臨床心理士指定大学院の側の協力が無ければスムーズに運営していけません。
そもそも心理士(師)の国家資格化の実現に向けて中心となって活動してきたのは当の日本臨床心理士会です。

自分達(臨床心理士)に不利なようにするはずがありません。

臨床心理士は、公認心理師の下位資格になるどころか、むしろより専門性の高い、上位資格として存続する可能性が高いです。


*以下は公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会から各臨床心理士に送られたメッセージです。

公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会から
全ての臨床心理士の皆さんへ
公認心理師法の成立と『臨床心理士』について

平成 27 年 11 月 19 日
公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

平成 27 年9月9日、公認心理師法が衆参両院本会議において可決、成立しました。
この法案成立には、長年にわたる臨床心理士の社会的な実績が中心的な役割を果たして 参りました。臨床心理士の皆さんが、利用者との信頼関係をもとに、社会のあらゆる方面 において積み重ねてこられた地道な臨床心理実践活動の働きとご尽力の賜だと思います。
そして現在、法案成立という新しい現実状況において、臨床心理士は、これまで培って きた我が国随一の実績に基づいて、さらに継続して利用者の心の安全・安心に発展的な貢 献をしていくため、新たな位置と役割を主体的に創造していくことが求められています。
しかしながら、同 16 日付で広く心理職一般としての法案は公布されましたが、ただし臨 床心理士自体が即国家資格になったわけではない現実を直視しつつ、「これからどうなっ ていくのか?」についての多種多様な情報や考えが交錯する混沌とした状況のなか、臨床 心理士は、むしろ新たな不安や緊張を実感されているのではないかと想像します。
ところで、臨床心理士の認定と適切な専門水準の維持向上を図ってきた公益財団法人日 本臨床心理士資格認定協会(以下、本協会)は、心の問題を抱えて訪れる利用者の安心・安 全のため、<こころの専門家>が重要であるという考えのもと 1988 年に創設され、すでに 3万人を超える臨床心理士を生み、育て、これまで一貫して我が国の<心の健康>・<こころの文化>を守り、育み、発展させてきました。
この立場から、本協会は、本法案の成立経緯を極めて強く意識し、国家資格化の重要性 を認識しつつも、重要事項についての懸念や意見表明を行ってきました。そして法案が成 立した現況において、臨床心理士の皆さんが置かれた状況を重く受けとめ、理解を深めな がら、本協会は、以下の考え方を基本に、新しい状況を開発的に歩んでいく所存です。

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 基 本 姿 勢

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会は、これまでと同じように臨床心理士 の資格認定をし、かつ臨床心理士養成大学院の指定をして参ります。その社会的な 責任を改めて自覚し、法案成立による国家資格との共存共栄を図る新しい状況を契機に、これまで以上に独自性と専門性を有する臨床心理士を創造的に開拓し、新た な存在意義を構築していく出発点にします。

1.これまでの社会的な信用と実績を堅持し、これからも「臨床心理士」を堅持します。

2.これからも独自性と専門性を充実発展させ、これまで以上に社会の期待に応えることができる臨床心理士の飛躍発展を図ります。

3.臨床心理士を堅持・飛躍発展させることにより、公認心理師との適切で妥当な共存共栄 関係の新たな創造をめざします。

1.これまでの社会的な信用と実績を堅持し、これからも「臨床心理士」を堅持します。

臨床心理士には、利用者とともに培ってきた社会的な信用と実績があります。そのこと により法案成立に貢献をしたことは、附帯決議において特に臨床心理士への配慮がされた ことにも明らかです。これらは臨床心理士と利用者が築いてきた大切な国民的財産です。 例えば、臨床心理士は、1995 年以来、文部科学省事業のスクールカウンセラーの 84%に 任用されています。学校での事件や地震・水害などの災害時緊急支援をはじめ、全国の大 学及び学生相談室、臨床心理士養成大学院相談室、省庁(厚生労働省、外務省、法務省、警 察庁、防衛省、海上保安庁など)、自治体、私立学校や産業界、私設相談施設等において、 じつに汎用的に任用され堅実な専門活動を行っています。臨床心理士は、社会の多方面で、 地域に密着した形で、利用者の個人的問題への地道な相談活動に励んでおり、すでに社会 的な公共性・通用性を得て定着している実態があります。 本協会は、こうした公益に資する専門的な日々の臨床心理士活動を、厳正な資格審査に より認定された3万人を超える資格登録者全員の社会的な信用と実績として堅持し、今後 とも利用者の安心・安全と信頼に応えていく重要性を深く認識しています。 同時に、本協会は、臨床心理士の養成にあたる専門職・指定大学院の修了者、現大学院 生、これから志望する多様な方々のことを重要視しています。専門職・指定大学院の認証 評価及び指定審査を担う本協会としては、当該大学院・教員とともに、附帯決議に配慮さ れた趣旨の具体化に尽くすことが、関係者と社会への説明責任であると考えています。 本協会は、任意の加入者が構成する団体とは異なる公益財団法人(内閣府認可)としての 特性を改めて自覚し、全ての臨床心理士資格認定者の実績と現況を堅持する社会的責任を深く認識しています。この基本的な考え方のもと、国家資格との共栄を図る上でも、これ まで以上に独自性と専門性を揺るぎなく堅持する臨床心理士の存在が重要と考えています。

2.これからも独自性と専門性を充実発展させ、これまで以上に社会の期待に 応えることができる臨床心理士の飛躍発展を図ります。

臨床心理士は、<もの>でない<こころ>の特殊性を基本に、かつ生身の人間の相談に 応える実践的な専門性を同時に備えた<こころの専門家>を志してきました。長年の実際活動を通じた検証と工夫改善を積み重ねて資格制度を確立し、社会的な公共性・通用性も得ながら、かけがえのない独自性と専門性をもつ臨床心理士の現在が構築されています。 その独自性と専門性を示す代表的な基本認識が、例えば以下の3点にあると考えます。

① 資格認定審査制度として、筆記(多肢選択形式・論文)と口述面接を総合した三位一体 (知識・論述・面接)による専門性の資格審査試験システムを確立しています。とくに受験生の臨床心理実習体験を重視し、『面接試験』を基本・必須にしていること。

② 養成制度として、大学院修士課程を基本モデルに専門職・指定大学院を全国の大学に 構築しています。養成教育に実地の実習が必須であり、一定の社会的生活経験を有す る大学院生を基準に、情報管理や守秘義務などに徹底した臨床心理実践倫理に基づく 場(臨床心理センター等の地域貢献窓口機関はじめ学内外実習施設)と実践事例情報に 関わる授業(事例検討・カンファレンス等)の『特化した教育システム』を基本・必須 にしていること。

③ 専門水準の維持向上制度として、実践経験を通じた継続的な自己研鑚と教育研修(スーパーヴィジョンを含む)により、職能義務(倫理・知識・研修・交流)を主体的に担う 重要性に鑑み、臨床心理専門家に固有の『資格更新制』を基本・必須にしていること。

本協会が臨床心理士を堅持するとは、例えば以上の基本認識を堅持するということであ り、その充実強化が、まずは臨床心理士の存立基盤であると考えます。 因に、臨床心理士の受験資格が、大学院修士課程に独立・集中・特化した養成教育を基 本モデルとする利点から、すでに医師や教師はじめ多様・多数の専門家が有資格者であり、 この資格そのものが密接な連携関係のもとに形づくられたユニークな汎用性の専門資格で す。また、臨床心理士養成大学院の附属相談施設は、単なる教育実習機関ではなく、学内 外の医療・教育機関等との連携はもとより、医師や教員等の高度な実務経験を有する大学 教員スタッフが連携し協働して相談に応じ、利用者と地域になくてはならない地域貢献・ 連携システムになっています。 例えば、このような臨床心理士が構築している独自性・専門性は、ますます複雑多様化 が進む生涯学習社会での対人援助において、自由な専門家連携によるチーム・ネットワー ク型の支援体制を推進する先進的モデルとなることが強く期待されます。

本協会のいう臨床心理士の堅持とは、これまでの充実強化はもとより、そこからこそ社 会的に求められる創造的・開拓的な存在意義へと飛躍発展を図るという意味であると考え ています。この基本認識のもと、養成、資格認定、専門性の維持向上の発展課題として、 学部と修士課程との関連(国家資格を有する者への多様な受験機会の提供可能性の課題等)、 修士と博士課程との関連(スーパーヴァイザーや臨床実践指導者養成の課題等)も検討視野 に、国家資格との共存共栄を図りつつ、臨床心理士の独自性と専門性の新たな未来像へと 飛躍発展を目指します。

3.臨床心理士を堅持・飛躍発展させることにより、公認心理師との適切で妥 当な共存共栄関係の新たな創造をめざします。

本協会は、本法律の理解を深め、附帯決議の趣旨に照らしながら省令化の具体的な整合 を見極めつつ、制度設計期間(2年以内)、施行後の移行期間(5 年間)はもちろん、むしろ それ以後を念頭に、これまで以上に利用者の安心・安全な心の健康、こころの文化に持続 発展的に寄与しうる良質な専門的営みの在り方を創造するため、臨床心理士を堅持・発展 させ、国家資格との適切で妥当な共存共栄関係の新たな構築を図ることに努めます。 これから文部科学省と厚生労働省が共管・協力して、公認心理師の国家資格像を具体的 に形づくっていく制度設計の作業が始まります。そのような現状ですので、現段階では本 協会としての基本姿勢をお伝えすることしかできません。しかし、新しい国家資格である 公認心理師は、臨床心理士資格とは異なりますが、臨床心理士に関係する団体、大学の関 係者、有資格者、志望者そして利用者にとって、大きな影響を受ける可能性について十分 に認識していること、それを踏まえて、本協会が公認心理師法について適切な対応を図っ ていく上での基本認識・姿勢について、お伝えしたいと考えました。 臨床心理士の皆さんには、流動的な状況の最中で心揺らぐなか、現実事情に応じて一定 の覚悟を求められるかもしれない局面にも、社会と利用者への信頼と責任を第一に考える 高度専門職業人として対処して頂きたいと思います。その際、例えば初心のもと主体的に 臨床心理士の有資格者であり続ける限り、自らを臨床心理士と呼称することも、臨床心理 士を堅持して錬磨し支え合うことも、国家資格との共存共栄を図りつつ発展的な未来像の 創造もできる、という本法律の正しい理解に基づく自由な認識に立って考えることが重要 です。

本協会は、以上の1~3の基本認識のもと、国家資格の省令化と施行に向けて諸状況に 取り組む際にも、移行期間後に想定される状況を見据えながら、具体的検討を図って参り ます。この考え方を基本に、臨床心理士を堅持し、皆さんとともに歩んで参ります。 その心強い支えとして、皆さんには、まず臨床心理士としての主体的な認識を大切に、 何よりも利用者等に不安や混乱が生じないよう、今こそ日々の臨床実践活動に邁進して頂 くことを切にお願い致します。

以上